雪が降らない街・柏から、泥まみれのゲレンデに思うこと

茶色のゲレンデに、
スタッフを立たせていないか
2026.03.17 | COLUMN
テレビでパラリンピックを観戦していて、ふと、やりきれない気持ちで手が止まりました。
画面に映るアルペンスキーのコース。もちろん、競技が行われるラインには白い雪が敷き詰められていますが、そのすぐ外側には、本来あるべき白銀の輝きが全くありません。剥き出しになった茶色の土が、コースを縁取るように広がっていたのです。
「これじゃあ、選手がかわいそうだ……」
思わず独り言が漏れました。4年に一度の、人生をかけた最高の舞台。そこで彼らが向き合っているのは、春の陽気で泥が混じりそうな重い雪と、コースを外れれば即座に土が待っているという、あまりに余裕のない過酷な環境です。最高の準備を重ねてきたアスリートたちには、もっと広大な、どこまでも続く真っ白なキャンバスを用意してあげたかった。そんな「切なさ」が胸を締め付けます。
「環境」を整えるという、重い責任
この光景は、決して他人事ではありません。我々が日々向き合っている「警備」という仕事にも、全く同じことが言えるからです。
どれほど腕の良い警備スタッフであっても、現場の環境が整っていなければ、その実力を100%発揮することはできません。誘導灯の配置、事前の打ち合わせ、現場の混乱……。これらが不十分なまま「あとはプロなんだから現場でなんとかしろ」とスタッフを立たせるのは、経営者の怠慢でしかない。それは、周囲に雪のないギリギリのコースに選手を放り出すのと同じくらい、残酷なことなのだと感じます。
「スタッフを、茶色のゲレンデに立たせてはいないか」
ギリギリの白いラインの上で必死に板をコントロールする選手たちの姿は、経営者としての私に、そんな鋭い問いを突きつけてくるようでした。
柏の空は、今日もどこまでも穏やか
ふと視線を窓の外に転じると、ここ柏の街はいつも通り、どこまでも穏やかな春の光に包まれています。
そもそも、柏という街は雪に対して至ってクールです。滅多に降らないし、たまに予報が出ても「あぁ、明日は少し早めに家を出ようか」くらいの落ち着いたものです。交通機関が多少乱れても、街中がパニックになるようなこともない。雪と一定の距離を保ち、淡々と日常を回し続ける。この「動じない強さ」こそが、柏という街の魅力だと私は思っています。
今日、3月17日。近所を歩けば、梅の香りは名残惜しそうに消えかけ、代わりに桜の蕾が膨らみ始めています。季節は確実に進んでいきます。パラリンピックの雪不足は、私たちが当たり前だと思っている「美しい四季」が、実は非常に脆い土台の上に成り立っていることを教えてくれているのかもしれません。
選手たちには、どうか最後まで怪我なく、己の信じる滑りを貫いてほしい。そして、今日も各地で「当たり前の日常」を守るために立ってくれているスタッフたちへ。皆が最高のパフォーマンスを出せる環境を作るために、私もまた、兜の緒を締め直して現場に向かうつもりです。
五輪警備保障株式会社
代表取締役 山本 高大


