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安倍元首相銃撃事件から学ぶ危機管理と警護の教訓

安倍元首相銃撃事件から学ぶ危機管理と警護の教訓

​五輪警備保障株式会社は、この度の事件で失われた安倍元首相のご冥福を心よりお祈り申し上げますとともに、安全・安心な社会の実現に向け、警備の専門的見地から深く考察し、警備業界全体への教訓として共有いたします。

1. 現場の状況と警備の課題

​この事件は、従来のテロ対策や要人警護の常識に対する大きな警鐘となりました。

  • 後方・側面からの脅威: 従来の要人警護は、聴衆が多く集まる前方からの脅威に対する警戒が主でした。しかし、本事件では、銃撃が演説者の後方から行われました。演説場所の後方は聴衆の注目が薄く、不審者が近づきやすい「セキュリティ・ホールの死角」となりがちです。
  • 「手製の武器」への対応: 犯人が使用したのは、市販品ではなく手製の銃器でした。従来の警護計画で想定される金属探知機などによる検査は、一見して不審物と判断しにくい手製の武器への警戒レベルを見直す必要があります。
  • 至近距離での射撃: 聴衆との距離が近く、比較的容易に犯人が演説者に接近できる状況でした。要人との間に一定の安全な距離(バッファゾーン)を確保し、不審者の接近を物理的に阻止する体制の重要性が再確認されました。

2. 警護体制における主要な教訓と技術革新の必要性

​この悲劇的な事件から、警備業界として以下の点を特に重要な教訓として捉え、今後の警備計画に反映させていくべきです。

​✅ 教訓 1:360度全方位警護と早期警戒の徹底

​選挙の街頭演説のような雑踏警備において、空港のような金属探知機を用いた厳格な検査は、群衆の滞留による雑踏事故のリスクを高めるため現実的ではありません。

  • 人の目によるプロファイリング強化: 金属探知機による物的検査の限界があるため、要人に向けた不審な視線、周囲に馴染まない不自然な服装や動作など、人の目によるプロファイリング(行動分析)を最優先します。不審行動を察知した際には、速やかな声掛けや、聴衆から離れた場所への誘導を行います。
  • 技術革新の要求: 人の目と技能だけに頼るのではなく、広範囲をカバーでき、かつ立ち止まることなく群衆に紛れた危険物を瞬時に特定できるような、非接触・高速・高精度の検知技術の更なる開発と実用化が強く求められます。

​✅ 教訓 2:危機発生時の即応体制と連携

  • 初動対応の迅速化: 最初の銃声後、犯人の動きを即座に止め、要人をで守る、あるいは安全な場所へ避難させるための緊急時の手順を厳格化します。
  • 「多重防護」の構築: 警護要員、警備員、主催者側のスタッフなど、関係者間の連携を密にし、複数の防御ライン(多重防護)を築くことで、どのラインが突破されても次の対応が可能な体制を構築します。

​✅ 教訓 3:会場設営と環境整備の重要性

  • バッファゾーンの確保: 要人の周囲に、侵入を防ぐ物理的な境界(バリケード、ロープなど)を明確に設け、警備員が目視でカバーできる十分な距離を確保します。
  • 地理的リスクの評価: 演説場所の選定にあたり、背後に建物や死角がないか、逃走経路や応援要員の到着のしやすさなど、地理的なリスクを事前に徹底的に評価する重要性を再認識します。

弊社は、これからも社会の安全・安心に貢献してまいります。

五輪警備保障株式会社

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